富士フイルムの子会社が「アナログ版に使う製版フイルムの製造を中止する」と発表した。長年印刷業界で中心工程であったフイルム製版が全く姿を消す。
アナログ製版フイルムの出荷のピークは2000年だった。以降は急激にデジタル製版CTP化が進行し24年経ってアナログ製版フイルム製造はゼロになる。世の中の流れだから仕方のないことであるが、29歳から印刷業界に身を置いてきた私は製版には特別の思いがある。
終戦後、町には製版専業の中小企業が林立していた。ほぼ手作業の製版技術によって印刷物の精巧さがものの見事に変わるのを私は目の当たりに見てきた。「印刷技術より製版技術で印刷物の品質ランクは決まる」と思った。だから新機能を付けたオフセット印刷機が売り出されても気持ちは動かなかった。
製版の重要さが身に染みているから当社制作課の都築明彦さんの「色調補正」の技術は現代のポイントとなるワザである。デジタルによる「色調補正」こそが印刷物のランクを決めるのだ。
となれば退職しないよう私は都築さんの腕をしっかり捕まえておかなければいけない。