私は親方の解説が好きだった。言葉は少ないがズバリ言い当てる。「あの力士は引きが得意だから。クックック」。「引きが得意」と言われた力士は故郷のファンに顔向けできない。それでも勝負には勝たねばならない。また引いちゃうのだ。
1番の特徴は「落ち着いて聞ける」解説だった。昔は玉ノ海梅吉(1912-1988)が長いこと辛口解説していたが北の富士にはユーモアがあった。
向こう正面に舞の海がいれば北の富士に胡麻を摺る様なこと言う。「親方がおっしゃったとおり…」を繰り返す。親分子分がハッキリしてこれがまたいい。舞の海の分析解説が一層冴えてくる。
亡くなって私が「惜しい」と思う人は少ない。北の富士は惜しい人だった。